自文化中心主義 ethnocentrism
認識論に関する反表象主義 anti-representationalismから帰結する反権威主義がよって立つのは、いわゆる通俗的な相対主義──真理は人それぞれ、場所や時代でまちまちであるから、認識的な優劣はどこにもない、という考え──ではない。それが標榜するのは、相対主義ではなくて、むしろ「自文化中心主義(ethnocentrism)」である。 ローティは自分が唱える自文化中心主義というものも、このパラダイム論と同じ構造をもっているという。すなわち、連帯を主たる目標とする科学者の集団は、自分の認める規則や規範に従った状態の下で、さまざまな別の仮説体系の可能性や価値についても判断しているのであり、そのことは必ずしも自分の規範やルールへの無際限の執着を意味するわけではない。科学の共同体はまさに、自分の共同体によって培われた判断基準の体系に従いつつ、さまざまな非規則的経験や逸脱的事例の勘案を行うことで、まったく別種の概念体系へと飛躍する可能性をもっているのである。
保守的思想ではないと主張